2006年07月25日

ゆれる

大阪では1館でしか上映していない。近畿全体でも2館だけだ(7月末現在)
こないだの土曜日、昼1時頃映画館について、「2時50分の回1枚」と言うと、
「立ち見ですがいいですか?」と聞かれ、2時間前でも駄目だったか。と思いつつ
5時10分の回のチケットを購入。それでも整理券番号46番。
4時間も暇だったから、ついバーゲンで散財しちまいましたよ。疲れたわよ。
県庁の星とかさ、日本沈没とかさ、そういうのが大手映画館で見れて、
これを観るのに苦労するって、なんかね、違うと思うのよね。日本映画。
まあ私の知らない仕組みがいろいろあるんだろうし、いいけどね。



そこらのお涙頂戴の日本映画とはこの映画はまず、格が違います。

東京でカメラマンとして成功している猛、ある時実家に戻って、久々に家族に会う。
早川家は一家でガソリンスタンドを経営していて、兄もそこで働いているが、
従業員に二人の幼なじみの千恵子がいることを知った猛は嫉妬し、ある行動に出る。
翌日3人で思い出の峡谷に出向き、そこで事件が起こり、兄は逮捕される・・
峡谷で何があったのか?兄の思いと弟の思いが、法廷で絡み合う。



見ている最中から、些細な台詞に胸をつかれたり、そういう映画だったのですが、
見終わってからも、何故かずっと心にひっかかるような、そんな映画でした。
心にいろんなシーンがよみがえって、ざらざらとしてしまう。
決して後味がいいわけでもないんですけど、悪くはない。清々しいような、温かいような、
未だに、不思議な映画です。



少ない台詞、短い映像で、兄と弟の性格が見事に表現されてます。
田舎でガソリンスタンドでそれでも真面目に働く兄の姿が、「オーライオーライ」と
トラックを誘導するときにはきはきしたいい声に現れてたり、気を遣う兄の姿が
酒席で弟に怒った父をなだめ、自分の足にかかっているおちょこの酒にも気づかずに
床を拭いている、その濡れた足に現れてたり。
弟の性格だって、さりげなく出てくる台詞で、いかに真面目で家族に愛される兄に
嫉妬しているかとか、都会暮らしでいかに田舎で浮いてるかとか、そういうのがわかる。
猛が帰るのを見送る女の一瞬の表情で感情が全て現れてたり。
そして、洗濯物をたたむ兄の背中。そこに話しかける弟の姿。今思い出しても切ないなあ。
俳優の演技力の賜物でもあるけど、すごく的確に場面を切り取っている、そういう印象。



そんなさりげない演出で兄弟の今まで生きてきた人生が浮き彫りにされていく。
真面目で、家族に認められている兄、小さなガソリンスタンドを出て、
東京で華やかな世界に住んでいる弟。弟は兄を尊敬しつつ軽蔑し、兄は弟を愛しつつも
羨望している。そんな彼らの心の揺れが、すごく繊細に描かれる。
愛情と憎しみ、双方に気持ちが大きく揺れる。今までの人生を思い出して揺れる。
その振れ幅が大きくて、真実までもが揺れ動く。
真実がどこにあったのか、そういうことにとらわれそうになるけれど、唯一無二であるはずの
事実までが、心のありようで揺れる。ただひたすら兄弟の生き様と心の動きを
描いた映画なのかもしれない。そんな気がする。



二人ともいい人間ではない。狡いし、小心だし。だけどすごく、人間らしい。
やたら正義感ぶった主人公じゃなくて、きちんと人間が描かれている。
彼らの父親と、その兄との確執も描かれ、父親達も人間くさくて、だから染みいる部分も多い。
田舎でくだらない仕事をしてるかもしれない、でも真面目に懸命に生きている人達。
彼らの人生を否定する権利は誰にもないけど、都会に憧れてしまう人の気持ちもわかるし、
そう思うとすごく切なくなる。私の人生だって、くだらないし、でも都会で有名になったからって、
得られないものだってあるだろう。例えば、家族とか。



いろいろ思うことがあった。もう一度、監督が書いた小説を読んで、
また思いを深めたいと思っている。



俳優陣が全員良かった。演技の心配をしないでいいのは嬉しい。
キム兄ですら(失礼)良かった。いい味出してる。真木よう子も良かった。表情とか。
でも主演2人の演技に支えられた映画だと言える。弟の心の揺れを演じきったオダギリ、
そして普通の男が壊れていく様子を自然かつ鬼気迫る演技で見せた香川照之、
この二人がいなかったらこの映画はそもそも成り立たなかっただろう。素晴らしかった。



音楽だけはちょっと不満。カリフラワーズっていうバンドが音楽を担当していて、
たまたまこないだ見に行ったライブでカリフラワーズを生で聴く機会があったんだけど、
わりとファンク色の強いバンドってイメージ。ノスタルジーだけど、ファンク、みたいな。
この映画でも、オルガンの音とか、ギターのカッティングとか、ファンクっぽい音が続いて、
山梨の田舎道なのにアメリカ映画みたいで、違和感があった。
途中から流れるピアノの音がすごく効果的でよかっただけに、あの違和感は残念。
エンドロールの曲はいい曲だけど、歌詞が映画の台詞と被りすぎかも・・・。
まあ、あまり他の人は気にならない、ファンクをよく聴く私みたいなのだけが
ひっかかるところなのかもしれないけどね。そこだけ個人的には、惜しかった。

posted by ざれこ at 23:16| Comment(1) | TrackBack(13) | タイトル別−や行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 なるほどー。ますます見たくなりましたよ。くっそー何でだ、何で広島上陸は9月なんだ。DVDで見ようかなあ。

 特に今は「夏映画」とか言っちゃってますが、興行収益が映画の価値じゃないだろうって言い続けて早○年。ちっとも変わらない部分にある意味敬意さえ感じます。かなしやね。

 さて映画。見てないから言うこともないですが、でも見たいなあ。すごく見たいなあ。人間という小宇宙を。

 ざれこさんの映画評はあてになるから大好きっす。
Posted by シマコ at 2006年07月28日 08:18
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